2026年版・8-2

株式会社法概論(計算書類・組織再編)の一問一答

証券外務員二種「関連科目」から、株式会社法概論(計算書類・組織再編)に関する4択問題を10問。「答えと解説を見る」を開くと、正解とその理由がその場で読めます。会員登録は不要です。

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問題

上から順に解いてみてください。答えは各問の下で確認できます。

問18-2

会社法上の計算書類に含まれないものはどれか。

  • ①貸借対照表
  • ②損益計算書
  • ③株主資本等変動計算書
  • ④事業報告
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正解 ④事業報告
解説
会社法上の計算書類は、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表の4つです(会社法435条2項)。事業報告と、計算書類および事業報告の附属明細書は、計算書類とは別の書類として位置づけられています。
この区別には意味があります。計算書類は金額で会社の財産と損益を表す書類であり、会計監査人設置会社では会計監査人の監査を受けます。これに対して事業報告は、事業の経過や成果、対処すべき課題、役員の状況などを文章で説明する書類で、金額の適正性を会計士が監査する対象ではなく、監査役等が監査します。
取締役は、これらを定時株主総会に提出し、計算書類については株主総会の承認を受けるのが原則です。ただし会計監査人設置会社で会計監査人が適正意見を出し、監査役等も異議を述べていないなど一定の要件を満たす場合は、株主総会への報告で足ります。事業報告は当初から報告事項です。

他の選択肢が不適切な理由
「貸借対照表」は決算日時点の資産・負債・純資産を表す計算書類です。
「損益計算書」は1会計期間の収益と費用から利益を表す計算書類です。
「株主資本等変動計算書」は純資産の各項目が期中にどう増減したかを表す計算書類です。

覚え方のポイント
計算書類は「BS・PL・株主資本等変動計算書・個別注記表」の4つ。「事業報告と附属明細書は仲間はずれ」と覚えます。数字の書類が計算書類、言葉の書類が事業報告、という切り分けです。
問28-2

剰余金の配当に関する記述として、誤っているものはどれか。

  • ①配当できる金額の上限は、その事業年度に生じた当期純利益の額である
  • ②剰余金の配当は、原則として株主総会の普通決議によって決定する
  • ③1事業年度における剰余金の配当の回数は、会社法上は制限されていない
  • ④取締役会設置会社は、定款に定めを置けば取締役会の決議で中間配当ができる
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正解 ①配当できる金額の上限は、その事業年度に生じた当期純利益の額である
解説
剰余金の配当は、配当時における分配可能額を超えて行うことはできません(会社法461条)。上限となるのはその事業年度に生じた当期純利益の額ではありません。分配可能額は過去から積み上がった剰余金を含む金額なので、当期が赤字でも過去の剰余金があれば配当でき、逆に当期に大きな利益が出ても分配可能額を超える配当はできません。株主総会が決議しても、分配可能額を超える部分は違法配当となり、受け取った株主や職務を行った取締役が会社に対して支払義務を負います。
この財源規制があるのは、会社債権者の保護のためです。株主は有限責任しか負わないので、会社債権者にとっての引当ては会社財産だけです。株主が好きなだけ配当を取ってしまえるとしたら、債権者は取り立てる先を失ってしまいます。そこで会社財産のうち「株主に払い出してよい部分」を分配可能額として区切り、その範囲でしか配当できないようにしているのです。
分配可能額は、おおまかにはその他資本剰余金とその他利益剰余金の合計から、自己株式の帳簿価額などを控除して求めます。

他の選択肢が不適切な理由
「剰余金の配当は、原則として株主総会の普通決議によって決定する」は正しい記述です(会社法454条1項)。
「1事業年度における剰余金の配当の回数は、会社法上は制限されていない」も正しい記述です。旧商法では年1回の利益処分が原則でしたが、会社法では分配可能額の範囲内で何回でも配当できます。
「取締役会設置会社は、定款に定めを置けば取締役会の決議で中間配当ができる」も正しい記述です(会社法454条5項)。中間配当は1事業年度に1回限りで、金銭による配当に限られます。

覚え方のポイント
配当は「回数は自由、金額は分配可能額まで」。株主に払い出せる金額に線を引いているのは債権者を守るため、と趣旨から押さえると、違法配当の返還義務まで自然につながります。
問38-2

剰余金の配当を行う場合の準備金の計上に関する記述として、正しいものはどれか。

  • ①配当額の10分の1を、資本準備金と利益準備金の合計が資本金の2分の1に達するまで積み立てる
  • ②配当額の10分の1を、資本準備金と利益準備金の合計が資本金の4分の1に達するまで積み立てる
  • ③配当額の5分の1を、資本準備金と利益準備金の合計が資本金の4分の1に達するまで積み立てる
  • ④配当額の10分の1を、資本準備金と利益準備金の合計が資本金の額に達するまで積み立てる
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正解 ②配当額の10分の1を、資本準備金と利益準備金の合計が資本金の4分の1に達するまで積み立てる
解説
剰余金の配当をする場合、会社は配当により減少する剰余金の額の10分の1を資本準備金または利益準備金として計上しなければなりません。ただし、資本準備金と利益準備金の合計額が資本金の4分の1に達している場合は、それ以上積み立てる必要はありません(会社法445条4項、会社計算規則22条)。
準備金を強制的に積ませるのは、配当によって会社財産が社外へ流出していく一方で、会社の中に一定の財産を確保しておくためです。資本金と準備金は原則として株主に配れない部分(拘束された部分)なので、これが厚いほど会社債権者にとっての引当てが確保されます。4分の1という水準は、会社の資金調達の自由と債権者保護のバランスをとった線引きです。

他の選択肢が不適切な理由
「配当額の10分の1を、資本準備金と利益準備金の合計が資本金の2分の1に達するまで積み立てる」は、積立てをやめてよい上限の数値が誤りです。旧商法時代の資本準備金の積立上限を4分の1に統一したのが現在の会社法で、2分の1という基準はありません。
「配当額の5分の1を、資本準備金と利益準備金の合計が資本金の4分の1に達するまで積み立てる」は、積立割合の数値が誤りです。正しくは5分の1ではなく10分の1です。
「配当額の10分の1を、資本準備金と利益準備金の合計が資本金の額に達するまで積み立てる」も誤りです。準備金を資本金と同額まで積む必要はなく、資本金の4分の1に達した時点で積立ては不要になります。

覚え方のポイント
「配当したら10分の1を積む、資本金の4分の1で打ち止め」と数字を2つ並べて覚えます。資本金と準備金は「配れない財産」、剰余金は「配れる財産」という対比で理解しておくと、減資や欠損填補の論点にもつながります。
問48-2

資本金の額の減少(減資)に関する記述として、誤っているものはどれか。

  • ①資本金の額の減少は、原則として株主総会の特別決議によって決定する
  • ②資本金の額の減少をする場合、原則として債権者保護手続を行う必要がある
  • ③資本金の額の減少をするには、必ず株主に対して金銭を払い戻さなければならない
  • ④欠損の填補を目的として定時株主総会で行う場合は、普通決議で足りることがある
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正解 ③資本金の額の減少をするには、必ず株主に対して金銭を払い戻さなければならない
解説
減資は、資本金という計算上の数値を減らす手続であり、株主への払い戻しを必ず伴うものではありません。実務でもっとも多いのは、資本金を減らして同額をその他資本剰余金に振り替え、繰越損失(欠損)を消す「無償減資」です。この場合、会社から現金は1円も出ていきません。
資本金を減らすのに株主総会の特別決議と債権者保護手続が必要とされているのは、資本金が「株主に配れない財産の額」を示す基準であり、これが小さくなると分配可能額が増え、その分だけ会社債権者の引当てが薄くなる可能性があるからです。債権者保護手続としては、官報による公告と知れている債権者への個別催告を行い、異議を述べた債権者には弁済や担保の提供などを行います。
ただし、定時株主総会で欠損の額を超えない範囲で減資をする場合には、普通決議で足ります(会社法309条2項9号)。この場合は分配可能額が増えるわけではなく、債権者の立場が実質的に悪化しないためです。

他の選択肢が不適切な理由
「資本金の額の減少は、原則として株主総会の特別決議によって決定する」は正しい記述です。
「資本金の額の減少をする場合、原則として債権者保護手続を行う必要がある」も正しい記述です。
「欠損の填補を目的として定時株主総会で行う場合は、普通決議で足りることがある」も正しい記述です。

覚え方のポイント
減資は「お金が出ていく減資(有償)」と「数字を動かすだけの減資(無償)」に分かれ、実務の多くは後者です。資本金は金庫の中身ではなく金庫のフタの大きさ、と考えると、減資が必ずしも財産の流出でないことが理解できます。
問58-2

会社の合併に関する記述として、正しいものはどれか。

  • ①吸収合併では、消滅する会社の権利義務が存続する会社に包括的に承継される
  • ②新設合併では、当事会社のうち1社が存続し、他の会社が新設会社となる
  • ③合併は当事会社の取締役会の決議のみで行うことができ、株主総会の決議は要しない
  • ④合併に反対する債権者が異議を述べることができる期間は、2週間で足りる
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正解 ①吸収合併では、消滅する会社の権利義務が存続する会社に包括的に承継される
解説
吸収合併とは、合併により消滅する会社の権利義務の全部を、存続する会社が承継する合併です(会社法2条27号)。承継は包括承継であり、資産・負債・契約上の地位などが個別の移転手続を経ずにまとめて移ります。この点が、権利義務を1つずつ移す必要のある事業譲渡との決定的な違いです。
合併には、原則として当事会社それぞれの株主総会の特別決議による合併契約の承認が必要です(会社法783条、795条、309条2項12号)。会社が消滅したり、株主の持株の価値や構成が大きく変わる行為なので、株主の重い意思決定を求めています。
また、合併では会社の財産と債務がまとめて別の会社に移るため、債権者にとっては債務者が入れ替わることになります。そこで債権者保護手続(官報公告と個別催告、異議を述べた債権者への弁済等)が必要です(会社法789条、799条)。

他の選択肢が不適切な理由
「新設合併では、当事会社のうち1社が存続し、他の会社が新設会社となる」は誤りです。新設合併では当事会社の全部が消滅し、新たに設立する会社がその権利義務を承継します。1社が存続するのは吸収合併です。
「合併は当事会社の取締役会の決議のみで行うことができ、株主総会の決議は要しない」も誤りです。原則として特別決議が必要です。ただし簡易合併・略式合併に当たる場合は、一方の会社の株主総会決議を省略できます。
「合併に反対する債権者が異議を述べることができる期間は、2週間で足りる」も誤りです。合併では債権者保護手続が必要ですが、債権者が異議を述べることができる期間は1か月を下ることができないと定められており(会社法789条2項)、2週間では足りません。

覚え方のポイント
「吸収は1社残る、新設は全部消えて新しい器ができる」と図で覚えます。合併・会社分割・株式交付には債権者保護手続が関わり、株式交換・株式移転では原則として不要(対価が株式で、債務者が入れ替わらないため)という対比も押さえておきます。
問68-2

会社分割に関する記述として、誤っているものはどれか。

  • ①吸収分割は、事業に関する権利義務の全部または一部を既存の他の会社に承継させる
  • ②新設分割は、事業に関する権利義務の全部または一部を新たに設立する会社に承継させる
  • ③会社分割による権利義務の承継は、個別の移転手続を要しない包括承継である
  • ④会社分割においては、事業のうち一部だけを切り出して承継させることはできない
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正解 ④会社分割においては、事業のうち一部だけを切り出して承継させることはできない
解説
会社分割は、会社がその事業に関して有する権利義務の「全部または一部」を他の会社に承継させる制度です(会社法2条29号・30号)。一部だけを切り出すことができるのが会社分割の最大の特長であり、不採算部門の切り離しや、特定事業の子会社化、グループ内での事業の集約などに使われます。したがって「一部だけを切り出して承継させることはできない」という記述は誤りです。
承継の対象は分割契約または分割計画で定めるため、どの資産・負債・契約を移すかを当事会社が設計できます。そのうえで移転は包括承継となるので、対象に含めた契約上の地位などを1件ずつ移転する手続は要りません。ここが事業譲渡との違いです。
会社分割では、分割会社の債務が承継会社に移ることがあり、債権者の債務者が入れ替わる場合があります。そのため一定の債権者について債権者保護手続が必要です。また分割会社の株主総会の特別決議が原則として必要です。

他の選択肢が不適切な理由
「吸収分割は、事業に関する権利義務の全部または一部を既存の他の会社に承継させる」は正しい定義です。
「新設分割は、事業に関する権利義務の全部または一部を新たに設立する会社に承継させる」も正しい定義です。
「会社分割による権利義務の承継は、個別の移転手続を要しない包括承継である」も正しい記述です。

覚え方のポイント
「吸収は既にある会社へ、新設はこれから作る会社へ」。この「吸収/新設」の対比は合併にも会社分割にも共通します。会社分割は事業を切り出せる、事業譲渡は1つずつ移す、と用途の違いで覚えます。
問78-2

株式交換および株式移転に関する記述として、正しいものはどれか。

  • ①株式交換では、新たに設立する会社が完全親会社となる関係がつくられる
  • ②株式移転では、新たに設立する会社が完全親会社となる関係がつくられる
  • ③株式交換および株式移転は、いずれも当事会社の一方が必ず消滅する
  • ④株式移転は、2社以上が共同して行う場合に限り利用することができる
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正解 ②株式移転では、新たに設立する会社が完全親会社となる関係がつくられる
解説
株式移転とは、1または2以上の株式会社がその発行済株式の全部を、新たに設立する株式会社に取得させる制度です(会社法2条32号)。新設会社が完全親会社となり、既存の会社が完全子会社になります。持株会社(ホールディングス)を新たに作ってその傘下に既存会社を入れる、という形がこれに当たります。
これに対して株式交換は、既存の株式会社が他の株式会社の発行済株式の全部を取得して完全親会社となる制度です(会社法2条31号)。親会社になるのが既存会社か新設会社かが、株式交換と株式移転を分ける決め手です。
いずれの場合も、株式が親会社に移るだけで、子会社となる会社は消滅せず、その財産や債務も動きません。債務者が入れ替わらないため、原則として債権者保護手続は不要です(対価に株式以外の財産を用いる場合など一定の場合は必要になります)。

他の選択肢が不適切な理由
「株式交換では、新たに設立する会社が完全親会社となる関係がつくられる」は株式移転の説明であり、株式交換の説明としては誤りです。株式交換の完全親会社は既存の会社です。
「株式交換および株式移転は、いずれも当事会社の一方が必ず消滅する」は誤りです。会社が消滅するのは合併です。
「株式移転は、2社以上が共同して行う場合に限り利用することができる」も誤りです。1社単独で株式移転を行い、自社の上に持株会社を作ることもできます。

覚え方のポイント
「交換は既存の親、移転は新しい親」と一言で覚えます。似た制度の株式交付は、完全子会社にしなくても(子会社にする程度でも)自社株式を対価に使える点が違いです。会社が消えるのは合併だけ、という切り分けも押さえます。
問88-2

事業譲渡に関する記述として、誤っているものはどれか。

  • ①事業譲渡では、譲渡する資産や契約上の地位を個別に移転する手続が必要である
  • ②事業の全部または重要な一部の譲渡は、原則として株主総会の特別決議を要する
  • ③事業譲渡は組織再編行為であるため、譲渡会社は必ず解散し清算しなければならない
  • ④会社法上の債権者保護手続は定められておらず、債務の移転には債権者の承諾等を要する
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正解 ③事業譲渡は組織再編行為であるため、譲渡会社は必ず解散し清算しなければならない
解説
事業譲渡は、会社が営む事業を取引行為として売買する契約であり、譲渡会社が解散・清算しなければならないというルールはありません。事業を売った後も、残った事業を続けたり、受け取った代金で別の事業を始めたりできます。事業の全部を譲渡した場合でも、解散するかどうかは会社の判断です。
事業譲渡は、合併や会社分割のような会社法上の組織再編と異なり、権利義務が包括的に移るわけではありません。不動産の登記、債権の譲渡通知、契約上の地位の移転についての相手方の同意など、移す財産・契約ごとに個別の手続が必要です。手間はかかりますが、譲り受ける側が引き継ぎたいものだけを選べるという利点があります。
また、事業譲渡には会社法上の債権者保護手続(公告・個別催告)は定められていません。債務を移すには債権者の承諾や債務引受の合意が必要になるため、債権者の意思を確認しないまま債務者が入れ替わることが起こらず、公告による保護のしくみを置く必要がないからです。
ただし、事業の全部または重要な一部の譲渡は会社の基礎を大きく変えるため、原則として株主総会の特別決議が必要です(会社法467条)。

他の選択肢が不適切な理由
「事業譲渡では、譲渡する資産や契約上の地位を個別に移転する手続が必要である」は正しい記述です。
「事業の全部または重要な一部の譲渡は、原則として株主総会の特別決議を要する」も正しい記述です。
「会社法上の債権者保護手続は定められておらず、債務の移転には債権者の承諾等を要する」も正しい記述です。

覚え方のポイント
会社分割と事業譲渡は「包括承継か個別移転か」「債権者保護手続があるかないか」の2点で対比して覚えます。どちらも株主総会の特別決議が要る点は共通です。
問98-2

組織再編に際しての反対株主の株式買取請求権に関する記述として、正しいものはどれか。

  • ①反対株主は、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを会社に請求できる
  • ②買取請求をした株主は、会社の承諾を得ることなく請求を撤回することができる
  • ③株主総会に出席して組織再編に賛成した株主も、買取請求権を行使できる
  • ④買取請求は、組織再編の効力が発生した後であっても行うことが認められる
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正解 ①反対株主は、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを会社に請求できる
解説
合併、会社分割、株式交換、株式移転、事業の全部の譲渡などに反対する株主は、会社に対して自分の株式を「公正な価格」で買い取るよう請求することができます(会社法785条、797条、806条、469条など)。
この制度があるのは、組織再編が株主総会の特別決議で決まる、つまり反対する少数株主の意思に反しても実行できる行為だからです。多数決で会社の姿が変わってしまう以上、それを受け入れたくない株主には、投下した資本を公正な価格で回収して会社から抜ける道を用意する必要があります。
行使するには、株主総会に先立って会社に対し反対の意思を通知し、かつ株主総会で反対の議決権を行使することが原則として必要です。そのうえで、効力発生日の20日前から前日までの間に、株式の数を明らかにして請求します。会社と株主で価格の協議がまとまらない場合は、裁判所に価格の決定を申し立てることができます。

他の選択肢が不適切な理由
「買取請求をした株主は、会社の承諾を得ることなく請求を撤回することができる」は誤りです。いったん買取請求をした株主は、会社の承諾を得た場合に限り撤回することができます(会社法785条7項)。会社は買取りに応じる資金を用意して手続を進めるため、株主が一方的に取り下げられるとすると手続が安定しないからです。なお買取価格の基準は市場の終値ではなく「公正な価格」であり、協議または裁判所の決定によって定まります。
「株主総会に出席して組織再編に賛成した株主も、買取請求権を行使できる」も誤りです。賛成した株主は反対株主に当たらず、請求できません。
「買取請求は、組織再編の効力が発生した後であっても行うことが認められる」も誤りです。効力発生日の20日前から前日までという行使期間が定められています。

覚え方のポイント
「反対を通知して、総会で反対票を投じて、効力発生日の20日前から前日までに請求する」という順序で覚えます。多数決で押し切れる代わりに、少数株主には出口を用意する、という発想が制度の根っこにあります。
問108-2

簡易組織再編および略式組織再編に関する記述として、正しいものはどれか。

  • ①簡易組織再編は、交付する対価の額が純資産額の3分の1以下の場合に認められる
  • ②略式組織再編は、相手方が総株主の議決権の3分の2以上を有する場合に認められる
  • ③簡易組織再編では、対価の額が小さいことを理由に株主総会の決議を省略できる
  • ④略式組織再編では、債権者保護手続も併せて省略することが認められている
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正解 ③簡易組織再編では、対価の額が小さいことを理由に株主総会の決議を省略できる
解説
簡易組織再編とは、組織再編の対価として交付する財産の帳簿価額の合計が、存続会社などの純資産額の5分の1以下である場合に、その会社の株主総会決議を省略できるしくみです(会社法796条2項)。
省略が認められるのは、対価が小さければその組織再編が株主に与える影響も小さく、株主総会を開くコストと時間に見合わないからです。会社の姿が大きく変わらない取引に、いちいち特別決議を求める必要はないという判断です。
これに対して略式組織再編は、相手方が特別支配会社、すなわち総株主の議決権の10分の9以上を保有している場合に、支配されている側の株主総会決議を省略できるしくみです(会社法784条1項、796条1項)。10分の9を握られていれば、株主総会を開いても結果は決まっており、開催が形式的な儀式にすぎないからです。
いずれも省略できるのは株主総会の決議だけです。債権者保護手続は債権者を守るための別の制度なので、要件を満たす組織再編では省略できません。

他の選択肢が不適切な理由
「簡易組織再編は、交付する対価の額が純資産額の3分の1以下の場合に認められる」は数値が誤りです。正しくは5分の1以下です。
「略式組織再編は、相手方が総株主の議決権の3分の2以上を有する場合に認められる」も数値が誤りです。正しくは10分の9以上(特別支配会社)です。3分の2は特別決議の可決要件の数値です。
「略式組織再編では、債権者保護手続も併せて省略することが認められている」も誤りです。省略できるのは株主総会決議に限られます。

覚え方のポイント
「簡易は金額が小さいから省略(5分の1以下)、略式は結果が見えているから省略(10分の9以上)」と、省略が認められる理由から覚えます。省略できるのは株主総会だけで、債権者保護手続は残る、という一線も必ずセットにします。

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