2026年版・4-7

相続・賃貸借契約の承継の一問一答

賃貸不動産経営管理士試験「賃貸借契約」から、相続・賃貸借契約の承継に関する4択問題を10問。「答えと解説を見る」を開くと、正解とその理由がその場で読めます。会員登録は不要です。

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問題

上から順に解いてみてください。答えは各問の下で確認できます。

問14-7

賃貸人甲が賃貸中の建物を丁に譲渡し、賃借人乙が建物の引渡しを受けていることにより対抗要件を備えている場合における賃貸人たる地位の移転に関する次の記述のうち、民法605条の2の規定に照らして最も適切なものはどれか。

  • ①賃貸人たる地位は、乙の承諾を要することなく、当然に甲から丁へ移転する。
  • ②賃貸人たる地位が丁へ移転するためには、乙の承諾を得ることが必要である。
  • ③賃貸人たる地位は、甲丁間の合意のみでは移転せず、乙の同意書が必要である。
  • ④賃貸人たる地位は移転せず、乙は甲に対して従前どおり賃料を支払い続ける。
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正解 ①賃貸人たる地位は、乙の承諾を要することなく、当然に甲から丁へ移転する。
解説
民法605条の2第1項は、賃借人が対抗要件を備えている場合において、賃貸不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、譲受人に移転すると定めている。この移転には賃借人の承諾を要しない。賃借人はすでに借地借家法31条の対抗要件(建物の引渡し)を備えているため、譲受人に対しても賃借権を対抗でき、その裏返しとして賃貸人たる地位も当然に譲受人へ承継される。なお、同条3項により、譲受人が賃貸人たる地位の移転を賃借人に対抗するためには、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をする必要がある。

他の選択肢が不適切な理由
「賃貸人たる地位が丁へ移転するためには、乙の承諾を得ることが必要である」及び「賃貸人たる地位は、甲丁間の合意のみでは移転せず、乙の同意書が必要である」とする記述は、いずれも乙の承諾や同意書を移転の要件としているが、条文上そのような要件は課されていない。「賃貸人たる地位は移転せず、乙は甲に対して従前どおり賃料を支払い続ける」とする記述は、対抗要件を備えた不動産の譲渡があった以上、賃貸人たる地位は当然に丁へ移転するのであり、移転しないとする点が誤りである。
問24-7

賃貸人甲が賃貸中の建物を丁に譲渡するに当たり、甲丁間で賃貸人たる地位を甲に留保する旨の合意をし、あわせて丁が甲に対して当該建物を賃貸する旨の合意をした場合の法律関係に関する次の記述のうち、民法605条の2第2項の規定に照らして最も適切なものはどれか。

  • ①甲丁間でその旨の合意をすれば、賃貸人たる地位は丁に移転せず、甲に留保される。
  • ②賃貸人たる地位を留保する合意は、乙の承諾がなければおよそ効力を生じない。
  • ③賃貸人たる地位の留保は、建物の譲渡そのものを無効にする効果を持つ合意である。
  • ④賃貸人たる地位を留保しても、乙は当然に丁に対して賃料を支払う義務を負う。
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正解 ①甲丁間でその旨の合意をすれば、賃貸人たる地位は丁に移転せず、甲に留保される。
解説
民法605条の2第2項は、不動産の譲渡人及び譲受人が賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及びその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨を合意したときは、賃貸人たる地位は譲受人に移転しないと定めている。この場合、丁が甲に建物を賃貸し、甲が乙に転貸するのと同様の法律関係が形成される。なお、同項後段により、譲渡人甲と譲受人丁との間の賃貸借が終了したときは、甲に留保されていた賃貸人たる地位は丁に移転する。

他の選択肢が不適切な理由
「賃貸人たる地位を留保する合意は、乙の承諾がなければおよそ効力を生じない」とする記述は、賃貸人たる地位の留保に賃借人乙の承諾を要件とする点で条文に反する。「賃貸人たる地位の留保は、建物の譲渡そのものを無効にする効果を持つ合意である」とする記述は、留保の合意が建物の譲渡自体を無効にするとする点で誤りであり、譲渡自体は有効に成立する。「賃貸人たる地位を留保しても、乙は当然に丁に対して賃料を支払う義務を負う」とする記述は、賃貸人たる地位が甲に留保された結果、乙が賃料を支払う相手は引き続き甲であり、丁に対して直接支払う義務を負うわけではない点を見誤っている。
問34-7

賃貸中の不動産が譲渡されたが、賃借人乙が対抗要件を備えていない場合において、賃貸人たる地位を移転させる方法に関する次の記述のうち、民法605条の3の規定に照らして最も適切なものはどれか。

  • ①甲丁間の合意により、乙の承諾を得ることなく賃貸人たる地位を丁に移転させることができる。
  • ②乙が対抗要件を備えていない以上、甲丁間の合意のみで賃貸人たる地位を移転させることはできない。
  • ③賃貸人たる地位を移転させるには、乙の承諾に加えて、公正証書の作成までもが必要である。
  • ④対抗要件を備えていない賃借人については、賃貸借契約自体が当然に効力を失うことになる。
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正解 ①甲丁間の合意により、乙の承諾を得ることなく賃貸人たる地位を丁に移転させることができる。
解説
民法605条の3は、不動産の譲渡人が賃貸人であるときは、その賃貸人たる地位は、賃借人の承諾を要しないで、譲渡人と譲受人との合意により譲受人に移転させることができると定めている。賃借人が対抗要件を備えていない場合には605条の2第1項による当然の移転は生じないが、この規定により、賃借人の承諾を得ることなく譲渡人・譲受人の合意のみで地位を移転させることができる。なお、この場合も605条の2第3項が準用され、賃借人に対抗するには所有権移転の登記が必要である。

他の選択肢が不適切な理由
「乙が対抗要件を備えていない以上、甲丁間の合意のみで賃貸人たる地位を移転させることはできない」とする記述は、対抗要件を備えていないことが賃貸人たる地位の移転を妨げるとする点で605条の3の規定に反する。「賃貸人たる地位を移転させるには、乙の承諾に加えて、公正証書の作成までもが必要である」とする記述は、地位の移転に乙の承諾や公正証書の作成を要件とする点で誤りである。「対抗要件を備えていない賃借人については、賃貸借契約自体が当然に効力を失うことになる」とする記述は、対抗要件の有無が譲受人に賃借権を対抗できるかどうかの問題であって、賃貸人と賃借人との間の賃貸借契約自体の効力を当然に失わせるものではない点を見誤っている。
問44-7

賃借人乙が死亡した場合における賃借権の帰趨に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

  • ①賃借権は財産権としての性質を有するため、乙の死亡により、その相続人に承継される。
  • ②賃借権は乙の一身に専属する権利であるため、乙の死亡により当然に消滅することになる。
  • ③賃借権は、乙の相続人が賃貸人甲との間で新たな契約を締結しない限り承継されない。
  • ④賃借権は、乙の死亡により当然に賃貸人甲に復帰し、相続の対象とはならない。
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正解 ①賃借権は財産権としての性質を有するため、乙の死亡により、その相続人に承継される。
解説
民法896条本文は、相続人が相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継すると定めている。賃借権は財産的価値を有する権利であり、同条ただし書きにいう一身に専属した権利には当たらないため、賃借人の死亡により相続の対象となる。相続人が複数いる場合、賃借権は各相続人の共有(準共有)に属することになる。

他の選択肢が不適切な理由
「賃借権は乙の一身に専属する権利であるため、乙の死亡により当然に消滅することになる」とする記述は、賃借権を一身専属権として死亡により当然消滅するとしているが、賃借権は財産権であり一身専属性を持たない。「賃借権は、乙の相続人が賃貸人甲との間で新たな契約を締結しない限り承継されない」とする記述は、相続人が新たな契約を締結しなければ承継されないとしているが、賃借権は相続開始と同時に当然に相続人へ承継される。「賃借権は、乙の死亡により当然に賃貸人甲に復帰し、相続の対象とはならない」とする記述は、賃貸人への当然復帰を主張しているが、賃借人の死亡のみを理由に賃借権が賃貸人に復帰する制度は存在しない。
問54-7

賃借人乙(内縁の夫)が相続人なくして死亡し、内縁の妻丙が乙と同居していた居住用建物について、丙の居住権保護に関する次の記述のうち、借地借家法36条の規定に照らして最も適切なものはどれか。

  • ①丙は、乙の権利義務を承継し、賃貸人甲との関係でも賃借人としての地位に立つことができる。
  • ②丙は内縁配偶者であるため、相続人がいない場合であっても居住を継続する権利を持たない。
  • ③丙が乙の権利義務を承継するには、甲との間で新たな賃貸借契約を締結することが必須である。
  • ④丙は乙の相続人ではないため、居住用建物からの退去を求められれば直ちに応じる義務を負う。
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正解 ①丙は、乙の権利義務を承継し、賃貸人甲との関係でも賃借人としての地位に立つことができる。
解説
借地借家法36条1項は、居住の用に供する建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合において、婚姻の届出をしていないが賃借人と事実上夫婦と同様の関係にあった同居者があるときは、その同居者は賃借人の権利義務を承継すると定めている。相続人がいない場合に限り、内縁配偶者等を保護するための特別の承継規定である。なお、同項ただし書きにより、同居者が相続人なしに死亡したことを知った後1か月以内に賃貸人に反対の意思を表示したときは承継しない。

他の選択肢が不適切な理由
「丙は内縁配偶者であるため、相続人がいない場合であっても居住を継続する権利を持たない」とする記述は、この明文規定の存在を無視しており誤りである。「丙が乙の権利義務を承継するには、甲との間で新たな賃貸借契約を締結することが必須である」とする記述は、権利義務の承継が法律上当然に生じるものであり、賃貸人との新たな契約締結を要件とはしていない点を見誤っている。「丙は乙の相続人ではないため、居住用建物からの退去を求められれば直ちに応じる義務を負う」とする記述は、丙が乙の権利義務を承継する結果、居住用建物の賃借人としての地位を取得するため、直ちに退去義務を負うことにはならない点で誤りである。
問64-7

賃借人乙(内縁の夫)が死亡し、乙に相続人丁がいる場合における内縁の妻丙の居住権保護に関する次の記述のうち、判例の考え方に照らして最も適切なものはどれか。

  • ①丙は相続人ではないため賃借権を直接相続できないが、丁の賃借権を援用して居住を継続できるとされる。
  • ②乙に相続人丁がいる場合、丙の居住権は保護されず、丁の求めに応じて直ちに退去しなければならない。
  • ③乙に相続人丁がいる場合であっても、丙は借地借家法36条により当然に賃借人の地位を承継する。
  • ④丙は、丁の意思にかかわらず、賃貸人甲との間で当然に独立した賃借人としての地位を取得するとされる。
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正解 ①丙は相続人ではないため賃借権を直接相続できないが、丁の賃借権を援用して居住を継続できるとされる。
解説
借地借家法36条は相続人がいない場合の承継を定めた規定であり、相続人丁がいる場合には賃借権はまず丁に相続される。判例は、このような場合であっても、内縁の配偶者である丙は相続人丁が取得した賃借権を援用して居住を継続することができるとし、賃貸人からの明渡請求等に対しても丁の賃借権を援用して対抗し得るとの考え方を示している(最判昭和42年2月21日)。

他の選択肢が不適切な理由
「乙に相続人丁がいる場合、丙の居住権は保護されず、丁の求めに応じて直ちに退去しなければならない」とする記述は、判例が示す援用の法理を否定しており、丙の居住権が一切保護されないとする点で誤りである。「乙に相続人丁がいる場合であっても、丙は借地借家法36条により当然に賃借人の地位を承継する」とする記述は、同条が適用されるのは賃借人が相続人なしに死亡した場合であり、相続人丁がいる本問の事案には適用されない点を見誤っている。「丙は、丁の意思にかかわらず、賃貸人甲との間で当然に独立した賃借人としての地位を取得するとされる」とする記述は、丙が独自に賃借人としての地位を取得するとする点が判例の考え方と異なり、丙はあくまで丁の賃借権を援用する立場にとどまる。
問74-7

賃借人乙の連帯保証人丙(個人)が保証期間中に死亡した場合における保証債務の相続に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

  • ①丙の死亡までに具体的に発生していた保証債務については、丙の相続人に承継される。
  • ②丙の死亡により保証契約自体が当然に消滅し、既発生の保証債務も相続の対象とならない。
  • ③丙の相続人は、丙の死亡後に新たに発生する賃料債務についても無制限に保証責任を負う。
  • ④丙の相続人は、丙の死亡後に生じた賃料債務についても極度額の範囲で責任を負う。
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正解 ①丙の死亡までに具体的に発生していた保証債務については、丙の相続人に承継される。
解説
連帯保証人が死亡した場合、既に具体的に発生していた保証債務は金銭債務として相続の対象となり、丙の相続人がこれを承継する。他方で、保証人の死亡は個人根保証契約における元本確定事由(民法465条の4第1項3号)に当たるため、死亡後に新たに生じる賃料債務については、相続人が保証責任を負うことはない。

他の選択肢が不適切な理由
「丙の死亡により保証契約自体が当然に消滅し、既発生の保証債務も相続の対象とならない」とする記述は、既発生の保証債務までもが相続の対象外になるとしており誤りである。「丙の相続人は、丙の死亡後に新たに発生する賃料債務についても無制限に保証責任を負う」とする記述は、元本確定後に新たに発生する債務にまで相続人が責任を負うとする点で、元本確定制度の趣旨に反する。「丙の相続人は、丙の死亡後に生じた賃料債務についても極度額の範囲で責任を負う」とする記述は、極度額の範囲に限定している点で一見穏当に見えるが、保証人の死亡により元本が確定する以上、死亡後に生じた債務は極度額の範囲内であっても保証の対象とならない点で誤りである。
問84-7

賃貸人甲が死亡した場合における賃貸人たる地位の帰趨に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

  • ①賃貸人たる地位は、甲の一身に専属するものではなく、甲の相続人に当然に承継される。
  • ②賃貸人たる地位は甲の一身専属権であるため、甲の死亡により当然に消滅することになる。
  • ③賃貸人たる地位を相続するには、賃借人乙の承諾を得ることが必要不可欠である。
  • ④賃貸人たる地位は、遺産分割が完了するまでの間は相続人に承継されないとされる。
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正解 ①賃貸人たる地位は、甲の一身に専属するものではなく、甲の相続人に当然に承継される。
解説
賃貸人たる地位は財産的な契約上の地位であり、賃借権の場合と同様に一身専属性を持たないため、民法896条本文により賃貸人の死亡によって相続の対象となる。相続人が複数いる場合は、賃貸人としての権利義務(賃料債権や敷金返還債務等)も相続分に応じて相続人に承継される。

他の選択肢が不適切な理由
「賃貸人たる地位は甲の一身専属権であるため、甲の死亡により当然に消滅することになる」とする記述は、賃貸人たる地位を一身専属権として死亡により消滅するとしているが、財産権としての性質上そのような扱いはされない。「賃貸人たる地位を相続するには、賃借人乙の承諾を得ることが必要不可欠である」とする記述は、賃貸人たる地位の相続に賃借人の承諾を要件とする点に法的根拠がない。「賃貸人たる地位は、遺産分割が完了するまでの間は相続人に承継されないとされる」とする記述は、相続の効力が相続開始の時から生じ、遺産分割前は共同相続人が賃貸人たる地位を共同で承継する点を見誤っている。

なお、賃貸人が死亡した場合に相続人が取得する賃料債権については、可分の金銭債権として法定相続分に応じて当然に分割されるのが判例の考え方であり、賃借人が死亡した場合の賃料債務の扱いとは異なる点に注意を要する。
問94-7

賃貸人たる地位が甲から丁へ移転した場合における敷金の取扱いに関する次の記述のうち、民法605条の2第4項の規定に照らして最も適切なものはどれか。

  • ①敷金の返還に係る債務については、原則として新賃貸人である丁に承継される。
  • ②敷金の返還に係る債務は、賃貸人たる地位が移転しても旧賃貸人甲に残る。
  • ③敷金は賃貸人たる地位の移転とともに当然に消滅し、乙は返還を請求できなくなる。
  • ④敷金の承継の有無は、乙と丁との間で新たに合意をしない限り確定しない。
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正解 ①敷金の返還に係る債務については、原則として新賃貸人である丁に承継される。
解説
民法605条の2第4項は、賃貸人たる地位が譲受人又はその承継人に移転したときは、民法608条の規定による費用の償還に係る債務及び民法622条の2第1項の規定による敷金の返還に係る債務は、譲受人又はその承継人が承継すると定めている。これは、賃借人の敷金返還請求権を確実に保護するための規定である。

他の選択肢が不適切な理由
「敷金の返還に係る債務は、賃貸人たる地位が移転しても旧賃貸人甲に残る」とする記述は、敷金返還債務が常に旧賃貸人に残るとしており、605条の2第4項の規定に反する。「敷金は賃貸人たる地位の移転とともに当然に消滅し、乙は返還を請求できなくなる」とする記述は、賃貸人たる地位の移転によって敷金返還請求権自体が消滅するとする点で誤りである。「敷金の承継の有無は、乙と丁との間で新たに合意をしない限り確定しない」とする記述は、敷金債務の承継に乙丁間の新たな合意を要件としているが、条文上そのような合意は不要である。
問104-7

賃借人乙が死亡し、丙及び丁の2名がその賃借権を共同相続した場合において、相続開始後に発生する賃料の支払義務に関する次の記述のうち、判例の考え方に照らして最も適切なものはどれか。

  • ①賃料債務は性質上不可分であるため、丙及び丁は各自が賃料の全額について支払義務を負う。
  • ②賃料債務は可分債務であるため、丙及び丁は各自の法定相続分に応じた額のみを負担することになる。
  • ③賃料債務は不可分債務となるが、丙及び丁は各自の相続分の限度で責任を負うにとどまる。
  • ④賃料債務は、遺産分割が完了するまでの間は丙及び丁のいずれも負担しないとされている。
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正解 ①賃料債務は性質上不可分であるため、丙及び丁は各自が賃料の全額について支払義務を負う。
解説
判例は、数人が共同して賃借人の地位にある場合、賃貸人が目的物を使用収益させる債務が性質上不可分であることから、その対価である賃料債務も性質上不可分な債務になるとしている(大判大正11年11月24日等)。賃借人が死亡して賃借権が共同相続された場合も同様であり、相続開始後に発生する賃料債務について、丙及び丁は各自が全額の支払義務を負う。不可分債務には連帯債務の規定が準用されるため(民法430条)、賃貸人は共同相続人の一人に対して賃料の全額を請求することができる。

なお、被相続人の死亡前に既に発生していた滞納賃料は通常の金銭債務であり、可分債務として相続開始と同時に当然に分割され、各相続人が法定相続分に応じて承継する。相続開始の前後で扱いが異なる点を区別して押さえておきたい。

他の選択肢が不適切な理由
「賃料債務は可分債務であるため、丙及び丁は各自の法定相続分に応じた額のみを負担することになる」とする記述は、相続開始後に生じる賃料債務を通常の金銭債務と同様に当然分割されるものとしているが、賃借権を共同相続した場合の賃料債務は性質上不可分な債務として扱われる点を見誤っており、死亡前の滞納賃料の扱いと混同するものである。「賃料債務は不可分債務となるが、丙及び丁は各自の相続分の限度で責任を負うにとどまる」とする記述は、債務の性質を不可分としながら責任範囲を相続分に限定している点で矛盾しており、不可分債務では各債務者が全部の履行義務を負う。「賃料債務は、遺産分割が完了するまでの間は丙及び丁のいずれも負担しないとされている」とする記述は、遺産分割の完了を賃料債務の発生要件とする根拠がなく、相続人は相続開始後の賃料について直ちに支払義務を負う点で誤りである。

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