2026年版・4-4

敷金・原状回復に関する契約上の取扱いの一問一答

賃貸不動産経営管理士試験「賃貸借契約」から、敷金・原状回復に関する契約上の取扱いに関する4択問題を10問。「答えと解説を見る」を開くと、正解とその理由がその場で読めます。会員登録は不要です。

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問題

上から順に解いてみてください。答えは各問の下で確認できます。

問14-4

敷金の意義に関する次の記述のうち、民法622条の2の規定によれば最も適切なものはどれか。

  • ①名目を問わず、賃料債務その他賃貸借に基づく賃借人の金銭債務を担保する目的で交付する金銭をいう。
  • ②敷金とは、賃貸借契約の締結に際して賃借人が賃貸人に交付する礼金と同一の性質を有する金銭をいう。
  • ③敷金とは、賃借人が将来の賃料増額分をあらかじめ賃貸人に前払いする趣旨で交付する金銭をいう。
  • ④敷金とは、賃貸人が賃借人に対して物件の修繕義務を履行することを担保するために交付する金銭をいう。
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正解 ①名目を問わず、賃料債務その他賃貸借に基づく賃借人の金銭債務を担保する目的で交付する金銭をいう。
解説
民法622条の2第1項柱書により、敷金とは、いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいうと定義されている。

他の選択肢が不適切な理由
礼金は賃貸人に対する謝礼的な性質を持つ金銭で返還を予定しない点で敷金とは性質が異なり、両者を同一のものとする理解は誤りである。敷金は賃料の前払いを目的とするものではなく、あくまで賃借人の債務を担保する性質を持つ。敷金は賃借人が賃貸人に対して負う債務を担保するものであり、賃貸人の修繕義務の履行を担保するものではない。
問24-4

敷金返還請求権の発生時期に関する次の記述のうち、民法622条の2の規定によれば最も適切なものはどれか。

  • ①賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたときに、敷金返還請求権が発生する。
  • ②賃貸借契約を締結した時点で、賃借人は既に敷金返還請求権を取得している。
  • ③賃貸借が終了した時点で、賃貸物の返還の有無を問わず直ちに敷金返還請求権が発生する。
  • ④敷金返還請求権は、賃貸物の明渡しと同時履行の関係に立つため明渡し前に行使できる。
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正解 ①賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたときに、敷金返還請求権が発生する。
解説
民法622条の2第1項1号により、賃貸人は、賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたときに、それまでに賃借人の債務不履行があればその金額を控除した残額を返還しなければならないとされ、敷金返還請求権はこの「賃貸借の終了」と「賃貸物の返還」の両方がそろった時点で発生する。

他の選択肢が不適切な理由
契約締結時点では敷金は担保としての性質を有するにとどまり、この時点で返還請求権が発生しているとする理解は誤りである。賃貸借が終了しても目的物の返還がなされていなければ返還請求権は発生せず、返還の有無を問わないとする点も622条の2第1項1号に反する。敷金返還請求権は賃貸物の返還を受けた後に初めて発生するものであるから、賃貸物の明渡しと同時履行の関係には立たず、明渡し前に行使することはできない(最高裁昭和49年9月2日判決も同旨)。
問34-4

賃貸借契約が継続している間における敷金の充当に関する次の記述のうち、民法622条の2第2項の規定によれば最も適切なものはどれか。

  • ①賃貸人は、賃借人が賃料等の金銭債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。
  • ②賃借人は、賃料の支払いに代えて、いつでも自由に敷金をその弁済に充てるよう賃貸人に請求することができる。
  • ③敷金は賃貸借終了後にしか用いることができず、契約継続中に賃料の弁済に充てることはできない。
  • ④敷金を賃料の弁済に充てるかどうかは、賃借人と賃貸人が協議して決定すべき義務的な手続とされる。
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正解 ①賃貸人は、賃借人が賃料等の金銭債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。
解説
民法622条の2第2項前段により、賃貸人は、賃借人がその賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。他方、同項後段により、賃借人の側から敷金をその債務の弁済に充てることを請求することはできないとされている。

他の選択肢が不適切な理由
敷金を弁済に充てることを請求できるのは賃貸人のみであり、賃借人からの請求を認めるとする点は622条の2第2項後段に反する。敷金は契約継続中であっても賃貸人の判断により債務の弁済に充てることができ、終了後にしか用いることができないとする点は誤りである。敷金の充当は賃貸人の一方的な判断で行うことができ、賃借人との協議を義務付ける規定は存在しない。
問44-4

賃貸借の目的である不動産の譲渡に伴い賃貸人たる地位が譲受人に移転した場合の敷金に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば最も適切なものはどれか。

  • ①敷金は、未払賃料等があればその弁済に充当された残額を、譲受人が承継することになる。
  • ②敷金は当然には承継されず、譲渡人と賃借人との間でのみ精算されるべきものである。
  • ③敷金は、譲渡人が譲受人に承継させる旨をあらかじめ賃借人に通知しなければ、承継されない。
  • ④敷金は、賃貸人たる地位が譲渡人に留保された場合であっても、譲受人が承継する。
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正解 ①敷金は、未払賃料等があればその弁済に充当された残額を、譲受人が承継することになる。
解説
民法605条の2第4項により、賃貸人たる地位が譲受人に移転したときは、敷金の返還に係る債務は譲受人が承継する。そして、譲渡人に対する未払賃料等がある場合の取扱いについては、判例(最高裁昭和44年7月17日判決)が、敷金は未払賃料債務の弁済に当然に充当され、その限度で敷金返還請求権は消滅し、残額についての権利義務関係が新賃貸人に承継されるとしており、この考え方が現在も維持されている。

他の選択肢が不適切な理由
敷金に関する権利義務は不動産の譲渡に伴い法律上当然に譲受人へ承継されるものであり、譲渡人と賃借人との間でのみ精算されるとする点は605条の2第4項に反する。この承継は法律上当然に生ずるものであり、賃借人への通知を承継の要件とする規定は存在しない。譲渡人と譲受人が賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及びその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、605条の2第2項により賃貸人たる地位自体が譲受人に移転しないため、留保された場合にも常に譲受人が承継するとする点も誤りである。
問54-4

建物の賃貸借が終了した場合における賃借人の原状回復義務の範囲に関する次の記述のうち、民法621条の規定によれば最も適切なものはどれか。

  • ①通常の使用及び収益によって生じた損耗並びに経年変化については、原則として原状回復義務を負わない。
  • ②賃借人は、通常の使用によって生じた損耗であっても、経年変化を含めてすべて原状回復しなければならない。
  • ③賃借人が原状回復義務を負うのは、賃借人の故意による損傷に限られ、過失による損傷は含まれない。
  • ④原状回復義務は賃借人の責めに帰することができない事由による損傷にも及び、天災による損傷も対象となる。
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正解 ①通常の使用及び収益によって生じた損耗並びに経年変化については、原則として原状回復義務を負わない。
解説
民法621条により、賃借人は賃借物を受け取った後に生じた損傷について原状回復義務を負うが、通常の使用及び収益によって生じた損耗並びに賃借物の経年変化については、この原状回復義務の対象から除外されている。

他の選択肢が不適切な理由
通常損耗・経年変化は621条によって明文で原状回復義務の対象外とされており、これらを含めてすべて原状回復するとの理解は条文に反する。621条の原状回復義務は賃借人の故意による損傷だけでなく過失による損傷にも及ぶため、故意による損傷に限られるとする点は誤りである。同条は賃借人の責めに帰することができない事由による損傷を原状回復義務の対象から除外しており、天災による損傷まで対象に含まれるとする点も誤りである。
問64-4

通常損耗の原状回復を賃借人の負担とする特約(通常損耗補修特約)の有効性に関する次の記述のうち、判例の考え方によれば最も適切なものはどれか。

  • ①賃借人が負担する損耗の範囲が具体的に明示され、その趣旨を認識して合意した場合に限り有効となる。
  • ②通常損耗を賃借人の負担とする特約は、民法621条の規定に反するため、無効とされる。
  • ③賃貸借契約書に「原状回復」という語が記載されてさえいれば、通常損耗補修特約は当然に有効となる。
  • ④通常損耗補修特約は、賃借人が事業者である場合に限り、例外的に有効なものと解されている。
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正解 ①賃借人が負担する損耗の範囲が具体的に明示され、その趣旨を認識して合意した場合に限り有効となる。
解説
判例は、通常損耗の補修費用を賃借人に負担させる特約について、賃借人が補修すべき損耗の範囲が賃貸借契約書自体に具体的に明記されているか、契約書に明記されていない場合でも賃貸人が口頭により説明し賃借人がその旨を明確に認識して合意の内容としたなど、負担の内容が明確に合意されていることを要するとしている。

他の選択肢が不適切な理由
判例は通常損耗補修特約を一律無効とはしておらず、要件を満たせば有効となり得るとしている。単に「原状回復」という語が記載されているだけでは、負担範囲の具体的な明示という要件を満たさず当然に有効となるわけではない。特約の有効性の判断枠組みは賃借人が事業者か消費者かによって直ちに区別されているわけではなく、事業者に限り有効とする限定は判例の考え方とは異なる。
問74-4

賃借人が消費者である賃貸借契約における原状回復に関する特約と消費者契約法との関係に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

  • ①消費者の利益を一方的に害する条項については、消費者契約法10条の規定により無効となる場合がある。
  • ②消費者契約法は事業者と消費者との間の契約のみを規律するものであり、賃貸借契約には適用されない。
  • ③消費者契約法が適用される場合には、賃貸人と賃借人との間の特約はすべて当然に無効となる。
  • ④消費者契約法10条は、消費者に不利な条項であっても契約書に明記されていれば有効とする規定である。
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正解 ①消費者の利益を一方的に害する条項については、消費者契約法10条の規定により無効となる場合がある。
解説
消費者契約法10条により、法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は義務を加重する条項であって、民法1条2項の基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは無効とされる。賃借人を消費者とし賃貸人を事業者とする賃貸借契約における過大な原状回復負担特約等がこの規定により無効とされる余地がある。

他の選択肢が不適切な理由
消費者契約法は事業者と消費者との間で締結される契約に広く適用され、賃貸借契約もその適用対象から除外されていない。同法10条はあくまで消費者の利益を一方的に害する条項を無効とするものであり、特約すべてを当然に無効とするものではない。契約書に明記されているというだけで消費者に不利な条項が常に有効となるとする点は10条の趣旨と正反対である。
問84-4

賃貸借契約における敷引特約(敷金の一部を返還しない旨の特約)の有効性に関する次の記述のうち、判例の考え方によれば最も適切なものはどれか。

  • ①敷引金の額が、賃料の額や契約期間に照らし高額に過ぎるといえない限り、有効となり得る。
  • ②敷引特約は敷金という制度の性質と矛盾するため、金額の多寡にかかわらず無効なものとなる。
  • ③敷引特約は賃貸人と賃借人が合意しさえすれば、金額の多寡を問わず当然に有効となる。
  • ④敷引特約は事業用建物の賃貸借にのみ認められ、居住用建物の賃貸借には適用されない。
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正解 ①敷引金の額が、賃料の額や契約期間に照らし高額に過ぎるといえない限り、有効となり得る。
解説
判例(最高裁平成23年3月24日判決)は、消費者契約である居住用建物の賃貸借契約に付された敷引特約について、通常損耗等の補修費用として通常想定される額、賃料の額、礼金等の一時金の授受の有無及びその額等に照らし、敷引金の額が高額に過ぎると評価すべきものであるときは、賃料が近傍同種の建物の賃料相場に比して大幅に低額であるなどの特段の事情がない限り、消費者契約法10条により無効となるとしている。裏を返せば、高額に過ぎるとまではいえない場合には有効となり得る。

他の選択肢が不適切な理由
判例は敷引特約を性質上一律に無効とはしておらず、高額に過ぎない限り有効となり得るとしている。逆に金額の多寡を問わず当然に有効とする理解も、高額に過ぎる場合は無効となり得るとする判例の判断枠組みと矛盾する。敷引特約は事業用建物に限られるものではなく、居住用建物の賃貸借においても問題となる特約である。
問94-4

賃借人の故意又は過失によって通常の使用収益の範囲を超える損傷が生じた場合の原状回復義務に関する次の記述のうち、民法の規定によれば最も適切なものはどれか。

  • ①その損傷については、通常の使用収益による損耗とは異なるため、賃借人が原状回復義務を負う。
  • ②賃借人の故意又は過失による損傷であっても、経年変化に該当すれば原状回復義務を負わない。
  • ③賃借人の故意又は過失による損傷は、賃貸人の事前の承諾がない限り原状回復義務の対象とならない。
  • ④賃借人が同居させていた家族の過失によって生じた損傷については、原状回復義務を負わない。
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正解 ①その損傷については、通常の使用収益による損耗とは異なるため、賃借人が原状回復義務を負う。
解説
民法621条は通常の使用及び収益によって生じた損耗並びに経年変化を原状回復義務の対象から除外しているが、賃借人の故意又は過失によって生じた通常の使用収益の範囲を超える損傷はこれに含まれず、賃借人が原状回復義務を負う。

他の選択肢が不適切な理由
故意又は過失による損傷は、単なる経年変化とは性質が異なるものであり、経年変化に該当するから義務を負わないとする理解は誤りである。原状回復義務は賃貸人があらかじめ承諾していたかどうかに関わらず生じ得るものであり、事前承諾がなければ義務の対象とならないとする点も誤りである。賃借人は、自らが同居させていた家族のように賃借物の使用について自己の支配下に置いた者の行為についても責任を負うため、同居家族の過失によって生じた損傷であることを理由に原状回復義務を免れるとする点も誤りである。
問104-4

建物賃貸借の終了に伴い賃貸人が敷金を返還する場合の未払賃料等との関係に関する次の記述のうち、民法622条の2の規定によれば最も適切なものはどれか。

  • ①賃貸人は、賃借人に未払の賃料等の債務があるときは、敷金からこれを控除した残額を返還すれば足りる。
  • ②賃貸人は、未払賃料等の有無にかかわらず、常に敷金の全額をそのまま賃借人に返還しなければならない。
  • ③未払賃料等がある場合、賃貸人は敷金を返還する義務を免れ、敷金相当額を賃貸人が確定的に取得する。
  • ④未払賃料等がある場合であっても、賃貸人は敷金とは別に賃借人へ支払いを求めることはできない。
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正解 ①賃貸人は、賃借人に未払の賃料等の債務があるときは、敷金からこれを控除した残額を返還すれば足りる。
解説
民法622条の2第1項により、賃貸借が終了し賃貸物の返還を受けたときに、賃貸人はそれまでに生じた賃借人の債務不履行があればその額を控除した残額を敷金として返還すれば足りる。敷金は担保としての性質を有するため、未払債務がある場合はこれに充当した上で残額のみを返還すれば義務を尽くしたことになる。

他の選択肢が不適切な理由
未払賃料等がある場合にまで敷金全額をそのまま返還しなければならないとする理解は、敷金の担保としての性質を無視するもので誤りである。敷金からの控除は未払債務に対応する限度で行われるものであり、控除の結果敷金を上回る未払債務が残る場合には賃貸人がなお請求できるのであって、未払債務があれば敷金相当額を確定的に取得できるとする点や、敷金とは別に請求することが一切できないとする点はいずれも誤りである。

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