2026年版・3-8

認知症の対応とケアの一問一答

介護支援専門員試験「保健医療サービスの知識等①(心身の特徴と疾病)」から、認知症の対応とケアに関する4択問題を10問。「答えと解説を見る」を開くと、正解とその理由がその場で読めます。会員登録は不要です。

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問題

上から順に解いてみてください。答えは各問の下で確認できます。

問13-8

パーソン・センタード・ケアの考え方に関する記述として、最も適切なものはどれか。

  • ①疾患の症状のみに着目し、本人の個性や生活歴は考慮しないケアである。
  • ②介護者側の都合や効率性のみを優先し、本人の意向は考慮しない。
  • ③疾患としてではなく、その人らしさを尊重して個別に理解しようとする。
  • ④全ての認知症の人に対して、画一的で同一の対応を行う考え方である。
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正解 ③疾患としてではなく、その人らしさを尊重して個別に理解しようとする。
解説
パーソン・センタード・ケアは、認知症の人を病気や症状だけで捉えるのではなく、その人の生活歴や価値観、人間関係を含めた「その人らしさ」を尊重し、一人ひとりの視点に立って理解し関わろうとする考え方である。イギリスの心理学者トム・キットウッドが提唱し、現在の認知症ケアの基本理念として広く用いられている。

他の選択肢が不適切な理由
「疾患の症状のみに着目し、本人の個性や生活歴は考慮しない」とする記述は、症状の見方だけでは説明できない一人ひとりの反応の違いを理解しようとした、この考え方の出発点を否定するものである。「介護者側の都合や効率性のみを優先し、本人の意向は考慮しない」とする記述は、本人を中心に置くという名称そのものと正反対である。「画一的で同一の対応を行う」とする記述も誤りで、同じ行動に見えても背景にある思いは人によって違うため、個別に理解することが求められる。
問23-8

バリデーション療法に関する記述として、最も適切なものはどれか。

  • ①本人の言動をその都度否定し、正しい現実を強く教え込む技法である。
  • ②本人との言語的な関わりを排除し、身体的な接触のみを行う技法である。
  • ③特定の薬物を用いて症状を緩和することを主眼とした治療法である。
  • ④本人の感情に寄り添い、訴えを否定せず共感的に関わる技法である。
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正解 ④本人の感情に寄り添い、訴えを否定せず共感的に関わる技法である。
解説
バリデーション療法は、認知症の人が発する言動の背景にある感情に着目し、それが事実と異なる内容であっても頭ごなしに否定せず、共感的に受け止めて関わることで情緒の安定を図るコミュニケーション技法である。アメリカのナオミ・ファイルによって開発され、不安や混乱を和らげる関わり方として広く紹介されている。

他の選択肢が不適切な理由
「その都度否定し、正しい現実を強く教え込む」とする記述は、この技法が避けようとしている関わり方そのものであり、繰り返せば本人の不安と混乱を強める。「言語的な関わりを排除し、身体的な接触のみを行う」とする記述も誤りで、相手の言葉を繰り返す、感情を言葉にして返すといった言葉によるやりとりが中核をなす。「特定の薬物を用いて症状を緩和することを主眼とした治療法」とする記述も誤りで、薬を使わない関わり方の一つに位置づけられる。
問33-8

回想法に関する記述として、最も適切なものはどれか。

  • ①過去の思い出を語り合うことで、精神的な安定や意欲の向上を図る技法である。
  • ②未来の予定についてのみ話し合い、過去を振り返ることを避ける技法である。
  • ③本人の発言を全て否定し、現実の年齢や日付を強制的に確認させる技法である。
  • ④身体機能の回復のみを目的とした、運動療法の一種を指す用語である。
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正解 ①過去の思い出を語り合うことで、精神的な安定や意欲の向上を図る技法である。
解説
回想法は、昔の写真や生活用品などを手がかりに過去の思い出を語り合うことを通じて、精神的な安定や自己肯定感、コミュニケーション意欲の向上を図る心理療法的なアプローチである。長期記憶は比較的保たれやすいという認知症の特徴を活かした関わりとして、個別でも集団でも実施されている。

他の選択肢が不適切な理由
「未来の予定についてのみ話し合い、過去を振り返ることを避ける」とする記述は、昔の記憶が比較的保たれやすいという特徴を活かすというねらいと逆である。「発言を全て否定し、現実の年齢や日付を強制的に確認させる」とする記述も誤りで、語られる内容の正しさを問うことはせず、語ること自体を支える関わりである。「身体機能の回復のみを目的とした、運動療法の一種」とする記述も誤りで、目的は気持ちの安定や人と関わる意欲を高めることにある。
問43-8

見当識障害のある人への対応に関する記述として、最も適切なものはどれか。

  • ①見当識に関する情報は与えず、本人の記憶にのみ頼るようにする。
  • ②カレンダーや時計を目につく場所に置くなど、環境面から見当識を補う。
  • ③間違いを厳しく指摘し、正しい日付や場所を暗記させるよう強く求める。
  • ④見当識障害は改善不可能であるため、環境面の工夫は無意味である。
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正解 ②カレンダーや時計を目につく場所に置くなど、環境面から見当識を補う。
解説
見当識障害のある人への対応では、大きな文字のカレンダーや時計を見えやすい場所に置く、季節を感じられる飾りを取り入れるなど、環境面の工夫によって日時や場所の手がかりを補うことが有効とされる。誤りを厳しく指摘するのではなく、さりげなく正しい情報に触れる機会をつくる関わりが望ましいとされる。

他の選択肢が不適切な理由
「見当識に関する情報は与えず、本人の記憶にのみ頼る」とする記述は、覚えておくことが難しくなっている本人に負担を負わせるだけで、不安を強める。「間違いを厳しく指摘し、正しい日付や場所を暗記させるよう強く求める」とする記述も誤りで、失敗を重ねる体験は自信を失わせ、かえって混乱や意欲の低下を招く。「改善不可能であるため、環境面の工夫は無意味」とする記述も適切ではなく、手がかりを増やすことで本人が自分で状況をつかめる場面は確実に増える。
問53-8

徘徊がみられる認知症の人への対応に関する記述として、最も適切なものはどれか。

  • ①行動を力ずくで制止し、居室に施錠して外出を防ぐことを最優先とする。
  • ②背景にある理由を考える必要はなく、無視して放置するのがよい。
  • ③行動の背景にある目的や不安を考えたうえで、安全を確保しつつ見守る。
  • ④徘徊は無意味な行動であり、本人なりの目的が存在することはない。
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正解 ③行動の背景にある目的や不安を考えたうえで、安全を確保しつつ見守る。
解説
徘徊とみえる行動の背景には、家に帰りたい、探し物をしているなど本人なりの目的や理由、あるいは不安な気持ちが存在することが多いとされる。力ずくで制止したり閉じ込めたりするのではなく、安全な環境を整えたうえでその思いに寄り添い、見守りながら気持ちを他の活動に向けるなどの関わりが望ましいとされる。

他の選択肢が不適切な理由
「力ずくで制止し、居室に施錠して外出を防ぐ」とする記述は、原則として禁じられている身体拘束にあたる行為である。「背景にある理由を考える必要はなく、無視して放置する」とする記述も誤りで、放置は転倒や交通事故、行方不明といった危険に直結する。「無意味な行動であり、本人なりの目的が存在することはない」とする記述も適切ではなく、仕事に行く、家に帰るといった本人にとっての理由を探ることが、結果として行動を落ち着かせる手がかりになる。
問63-8

もの盗られ妄想がみられる場合の対応に関する記述として、最も適切なものはどれか。

  • ①訴えの内容を論理的に説明し、誤りであることを強く納得させる。
  • ②介護者自身が疑われても、直ちに関わりを絶ち距離を置くのがよい対応である。
  • ③妄想の内容には取り合わず、聞き流して無視することが望ましい対応である。
  • ④訴えをいったん頭ごなしに否定せず、一緒に探すなどして気持ちに寄り添う。
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正解 ④訴えをいったん頭ごなしに否定せず、一緒に探すなどして気持ちに寄り添う。
解説
もの盗られ妄想は、大切な物をしまった記憶自体を失うことへの不安が背景にあることが多く、身近で世話をする家族や介護者が疑われやすいとされる。訴えを頭ごなしに否定したり論理的に説得しようとしたりするのではなく、いったん気持ちを受け止め「一緒に探しましょう」と共感的に関わることで、本人の不安を和らげやすいとされる。

他の選択肢が不適切な理由
「論理的に説明し、誤りであることを強く納得させる」とする記述は、しまった記憶そのものが失われている以上、説明を重ねても納得には至らず、責められていると受け取られやすい。「介護者自身が疑われても、直ちに関わりを絶ち距離を置く」とする記述も適切ではなく、最も身近な人が疑われるのは不安の裏返しであるため、担当を交代するなどの調整は必要でも、支援を断つことは解決にならない。「取り合わず、聞き流して無視する」とする記述も誤りで、受け止めてもらえないという体験が不安をさらに強める。
問73-8

認知症カフェに関する記述として、最も適切なものはどれか。

  • ①認知症の人や家族が地域住民や専門職と交流できる場として設けられている。
  • ②医療機関の入院病棟の一部を指す名称であり、地域住民は利用できない。
  • ③認知症の診断を専門的に行う施設であり、交流の場としての機能はない。
  • ④利用対象は認知症の診断を受けた本人のみに限定され、家族は利用できない。
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正解 ①認知症の人や家族が地域住民や専門職と交流できる場として設けられている。
解説
認知症カフェは、認知症の人やその家族が、地域住民や医療・介護の専門職と気軽に交流し、情報交換や相談ができる場として全国的に展開されている取り組みである。認知症の人が孤立を防ぎながら安心して過ごせる居場所となるとともに、家族が悩みを共有し合う場としても重要な役割を担っている。

他の選択肢が不適切な理由
「医療機関の入院病棟の一部を指す名称であり、地域住民は利用できない」とする記述は、地域に開かれた場であるという性格と正反対である。「認知症の診断を専門的に行う施設であり、交流の場としての機能はない」とする記述は、専門的な診断を担う医療機関と取り違えたものである。「利用対象は認知症の診断を受けた本人のみに限定され、家族は利用できない」とする記述も誤りで、家族が悩みを分かち合える場であることが大きな役割の一つである。
問83-8

認知症サポーターに関する記述として、最も適切なものはどれか。

  • ①国家資格を有する医療専門職のみが担うことができる役割を指す用語である。
  • ②所定の講座を受講した、地域で認知症の人を見守り支える一般住民等を指す。
  • ③認知症の人本人が資格として取得するものであり、地域住民は対象外である。
  • ④専ら企業の管理職を対象とした、労務管理に関する研修修了者を指す。
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正解 ②所定の講座を受講した、地域で認知症の人を見守り支える一般住民等を指す。
解説
認知症サポーターは、認知症について正しく理解し、地域や職場で認知症の人やその家族を温かく見守り支える応援者として、認知症サポーター養成講座を受講した一般住民や企業従業員などが認定される仕組みである。認知症施策推進大綱においても、地域全体で認知症の人を支える基盤づくりの一環として位置づけられている。

他の選択肢が不適切な理由
「国家資格を有する医療専門職のみが担う」とする記述は誤りで、資格ではなく講座を受ければ誰でもなれる仕組みであることが、地域に理解を広げるという目的にかなっている。「認知症の人本人が資格として取得するものであり、地域住民は対象外」とする記述も誤りで、支える側の住民や企業の従業員、学校の児童生徒などが対象である。「専ら企業の管理職を対象とした、労務管理に関する研修修了者」とする記述も誤りで、対象は特定の立場に限られていない。
問93-8

若年性認知症の人への就労支援に関する記述として、最も適切なものはどれか。

  • ①発症が確認された時点で、就労の継続は困難と一様に判断される。
  • ②就労に関する支援制度は存在せず、退職以外の選択肢はない。
  • ③本人の状態に応じ、業務内容の調整や関係機関と連携した支援が行われる。
  • ④支援の対象は本人のみに限られており、雇用主への働きかけは行われない。
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正解 ③本人の状態に応じ、業務内容の調整や関係機関と連携した支援が行われる。
解説
若年性認知症の人は現役世代であることが多く、本人の症状の程度に応じて業務内容や勤務時間を調整したり、若年性認知症支援コーディネーターなどの専門相談窓口や産業医、ハローワークと連携したりしながら、就労継続や再就職に向けた支援が行われる。経済的な基盤を保つ観点からも重要な支援領域とされる。

他の選択肢が不適切な理由
「発症が確認された時点で、就労の継続は困難と一様に判断される」とする記述は、症状の程度も仕事の内容も人によって異なるという実際を無視しており、本人から役割と収入を一度に奪うことになる。「支援制度は存在せず、退職以外の選択肢はない」とする記述も誤りで、専門の相談窓口のほか、障害者手帳の取得や障害年金といった支えがある。「支援の対象は本人のみに限られており、雇用主への働きかけは行われない」とする記述も誤りで、業務内容の調整には職場側の理解が欠かせない。
問103-8

認知症の人の意思決定支援に関する記述として、最も適切なものはどれか。

  • ①認知機能の低下がみられた時点で、本人の意思確認は不要になる。
  • ②意思決定は家族や専門職が行うものであり、本人の関与は求められない。
  • ③本人の意思よりも、周囲の都合や効率を優先すべきである。
  • ④本人の意思を尊重して、できる限り自ら意思決定できるよう支援する。
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正解 ④本人の意思を尊重して、できる限り自ら意思決定できるよう支援する。
解説
認知症の人であっても、その能力に応じてできる限り自らの意思で決定できるよう支援することが原則とされ、厚生労働省の意思決定支援ガイドラインでもこの考え方が示されている。共生社会の実現を推進するための認知症基本法においても、認知症の人の意見表明の機会確保と尊厳の保持が基本理念として位置づけられている。

他の選択肢が不適切な理由
「認知機能の低下がみられた時点で、本人の意思確認は不要になる」とする記述は誤りで、決める力は全か無かで失われるものではなく、伝え方や選択肢の示し方を工夫すれば示せる意思は多く残っている。「意思決定は家族や専門職が行うものであり、本人の関与は求められない」とする記述も誤りで、周囲が代わって判断するのは、本人の意思をどうしても推し量れない場合に限られる。「周囲の都合や効率を優先すべき」とする記述は、尊厳の保持という基本理念に正面から反する。

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