2026年版・8-1

水力発電の構造と出力計算の一問一答

第一種電気工事士「発電・送電・変電施設」から、水力発電の構造と出力計算に関する4択問題を10問。「答えと解説を見る」を開くと、正解とその理由がその場で読めます。会員登録は不要です。

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問題

上から順に解いてみてください。答えは各問の下で確認できます。

問18-1

水力発電所の理論水力P〔kW〕を求める式として正しいものは。ただし、Qは流量〔m³/s〕、Hは有効落差〔m〕とする。

  • ①P=9.8QH²
  • ②P=QH/9.8
  • ③P=9.8QH
  • ④P=9.8Q/H
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正解 ③P=9.8QH
解説
詳細解説
理論水力は、1秒間に落下する水がもつ位置エネルギーの大きさです。
水1m³の質量は1000kgなので、流量Q〔m³/s〕の水が有効落差H〔m〕を落ちるときの仕事率は 1000×9.8×Q×H〔W〕となり、キロワットで表すと P=9.8QH〔kW〕です。
落差を2乗する式は、位置エネルギーが高さに比例することと合いません。
9.8で割る式や落差で割る式は、落差が大きいほど出力が小さくなることになり、水力発電の原理と矛盾します。
実際に発電機から取り出せる出力は、これに水車効率と発電機効率を掛けた P=9.8QHη₍水車₎η₍発電機₎ になります。まず理論水力を出し、次に効率を掛けるという順序で計算します。

他の選択肢が不適切な理由
式の形は単位で確かめられます。1秒あたりに落ちる水の量と落ちる高さを掛け合わせた形でなければ、1秒あたりのエネルギーになりません。落差を2乗した式では、位置エネルギーが高さに比例するという関係から外れてしまいます。落差で割る式は、落差が大きい地点ほど出力が小さいことになり、高い所から水を落とすという水力発電の考え方そのものと矛盾します。
問28-1

有効落差50m、使用水量20m³/sの水力発電所がある。水車と発電機を合わせた総合効率を85%とするとき、発電機の出力〔kW〕にもっとも近い値は。

  • ①7350
  • ②8330
  • ③9800
  • ④11500
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正解 ②8330
解説
詳細解説
まず理論水力を求めます。P=9.8QH=9.8×20×50=9800kW です。
これに水車と発電機の総合効率0.85を掛けると、発電機出力は 9800×0.85=8330kW となります。
9800kWは効率を掛け忘れた理論水力そのもの、7350kWは効率を0.75とした場合の値です。
11500kWは効率で割ってしまった場合に近い値で、実際に取り出せる電力が理論水力を上回ることはないため明らかに誤りです。
水力発電の計算は「9.8×流量×有効落差」で理論水力を出し、そこに1より小さい効率を掛けて実際の出力にする、という二段構えです。答えが理論水力より大きくなったら計算の向きを誤っていると気づけます。

他の選択肢が不適切な理由
効率は必ず1より小さい値なので、求める出力は理論上の値より小さくなります。したがって理論水力そのものの値や、それを上回る値は、計算を始める前の段階で候補から外せます。7350という値は効率を0.75として計算した場合に現れます。効率を掛けるのか割るのかで迷ったときは、答えが理論水力より大きくなっていないかを見れば、向きの誤りにすぐ気づけます。
問38-1

水力発電所における有効落差の意味として、正しいものは。

  • ①総落差から損失水頭を差し引いた値
  • ②取水口の水面から放水面までの高さ
  • ③水車の中心から放水面までの高さ
  • ④管路で失われる水頭だけを表す値
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正解 ①総落差から損失水頭を差し引いた値
解説
詳細解説
有効落差は、実際に水車の仕事に変えられる落差で、総落差から水路や水圧管路で失われる損失水頭を差し引いた値です。
取水口の水面から放水面までの高さは総落差そのもので、まだ損失を引いていません。この値で出力を計算すると、実際より大きな出力を見積もることになります。
水車の中心から放水面までの高さは吸出し高さに関係する量で、落差の定義とは別のものです。
管路で失われる水頭だけを表す値は損失水頭であり、有効落差の一部を構成する量にすぎません。
出力計算の式に入れるHは必ず有効落差です。水路が長い発電所ほど損失水頭が大きく、有効落差は総落差より目立って小さくなります。

他の選択肢が不適切な理由
取水口の水面から放水面までの高さは損失を差し引く前の値なので、これを式に入れると実際より大きな出力を見積もることになります。水路が長い発電所ほどその差は大きくなります。管路で失われる分だけを表す量は、差し引かれる側の値であって落差そのものではありません。水車の中心から放水面までの高さは、水車の据付けの高さに関わる別の量で、出力の計算に用いる落差とは意味が異なります。
問48-1

落差が大きく流量が比較的少ない地点に適し、ノズルから噴出させた水をバケットに当てて回転させる衝動水車は。

  • ①フランシス水車
  • ②カプラン水車
  • ③プロペラ水車
  • ④ペルトン水車
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正解 ④ペルトン水車
解説
詳細解説
ペルトン水車は、水圧管路で導いた水をノズルから高速の噴流にして、円周上に並ぶ椀形のバケットに当てて回す衝動水車です。水がもつ圧力をいったんすべて速度に変えてから利用するため、高落差で流量が少ない山間部の発電所に適します。
フランシス水車は中程度の落差で使われる反動水車で、渦巻き状のケーシングから羽根車の全周に水が入ります。
カプラン水車とプロペラ水車は低落差で流量の多い地点に適した反動水車で、いずれも噴流を用いません。
噴流の勢いを羽根で受け止める、という構造から「衝動」水車と呼ばれます。落差の大小と水車の種類の対応は、水力発電で必ず問われる基本事項です。

他の選択肢が不適切な理由
他の三つはいずれも羽根車の周囲を水で満たし、水がもつ圧力と流れの両方を使って回す形式で、ノズルから噴き出した水を当てる構造ではありません。とくに落差が小さく水量の多い地点に向く形式は、羽根が水の流れの中に置かれることを前提としており、高い落差で生じる大きな圧力を受ける使い方には適しません。水の勢いを噴流に変えてから当てるかどうかが、この形式を分ける決め手です。
問58-1

フランシス水車の特徴として、正しいものは。

  • ①中程度の落差で広く用いられる反動水車
  • ②高落差専用のノズルをもつ衝動水車
  • ③羽根の角度を自由に変えられる低落差の水車
  • ④水の噴流をバケットで受ける水車
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正解 ①中程度の落差で広く用いられる反動水車
解説
詳細解説
フランシス水車は、渦巻き形のケーシングとガイドベーンを通して羽根車の全周から水を流し込み、水の圧力と速度の両方を利用して回す反動水車です。適用できる落差の範囲が広く、日本の水力発電所でもっとも多く採用されています。
ノズルをもつ衝動水車はペルトン水車の説明です。
羽根の角度を負荷に応じて変えられる低落差の水車はカプラン水車の説明で、フランシス水車の羽根は固定されています。
噴流をバケットで受けるのも、やはりペルトン水車の構造です。
「高落差はペルトン、中落差はフランシス、低落差はカプラン」という対応で整理すると、水車の種類の問題はほぼ解けます。

他の選択肢が不適切な理由
ノズルを持ち噴流を受ける形式や、水の噴流をバケットで受ける形式は、いずれも高い落差の地点で用いる衝動水車の説明であり、羽根車の全周から水を流し込む形式とは構造が異なります。負荷に応じて羽根の角度を変えられる低落差向けの形式も別の水車で、この水車の羽根は固定されています。適用できる落差の範囲と、羽根が動くかどうかの二点で見分けます。
問68-1

落差が小さく流量が多い地点に適し、羽根車の羽根の角度を負荷に応じて変えられる反動水車は。

  • ①ペルトン水車
  • ②フランシス水車
  • ③カプラン水車
  • ④斜流水車
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正解 ③カプラン水車
解説
詳細解説
カプラン水車は、プロペラ水車の羽根を可動にしたもので、負荷が変わっても羽根の角度を調整して高い効率を保てます。落差が小さく流量の多い河川の下流部などに適した反動水車です。
ペルトン水車は高落差用の衝動水車、フランシス水車は中落差用の反動水車で、いずれも羽根は固定です。
斜流水車(デリア水車)はフランシス水車とカプラン水車の中間的な構造で、中低落差に用いられますが、本問の「低落差で羽根の角度を変える」という条件にもっともよく合うのはカプラン水車です。
低落差の発電所では流量の変動が大きいため、羽根の角度を変えて効率を保てる利点が特に生きます。

他の選択肢が不適切な理由
高い落差で用いる衝動水車と、中程度の落差で用いる反動水車は、どちらも羽根が固定されているため、負荷が変わったときに角度を調整して効率を保つことができません。斜流の形式は中程度から低い落差にかけて用いられるもので、落差が小さく流量の多い地点という条件に最もよく合うものではありません。落差の大小と、羽根が動くかどうかを組み合わせて判断します。
問78-1

水車のキャビテーションに関する記述として、正しいものは。

  • ①水温が上がり水車が膨張する現象
  • ②圧力低下で気泡が生じ崩壊する現象
  • ③弁の急閉で管内圧力が上がる現象
  • ④発電機の回転速度が急に落ちる現象
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正解 ②圧力低下で気泡が生じ崩壊する現象
解説
詳細解説
キャビテーションは、水車の羽根の裏側など流速が速くなる部分で圧力が水の飽和蒸気圧より下がり、水が局所的に蒸発して気泡が生じる現象です。気泡が圧力の高い場所へ流れて一気につぶれるとき強い衝撃が生じ、金属面をえぐる壊食や振動、騒音、効率の低下を招きます。
弁の急閉で管内圧力が上がるのは水撃作用(ウォータハンマ)で、別の現象です。
水温上昇による膨張や回転速度の低下は、キャビテーションの定義そのものではありません。
対策としては、吸出し高さを低く抑える、水車を過度な部分負荷で運転しない、壊食に強い材料を用いる、といった方法がとられます。

他の選択肢が不適切な理由
弁を急に閉じたときに管内の圧力が上がる現象は、水の流れが急に止められることで起こる別の現象で、対策として設ける設備も異なります。水温が上がって機器が膨張するという説明は、この現象の定義そのものと関係がありません。回転速度が急に落ちることは、この現象が進んだ結果として起こりうるものの、現象そのものの説明にはなりません。原因は圧力が下がることにあります。
問88-1

反動水車に設ける吸出し管(ドラフトチューブ)の役割として、正しいものは。

  • ①水圧管路の圧力上昇を吸収する設備
  • ②取水口から水車まで水を導く水路
  • ③水車の回転速度を一定に保つ装置
  • ④放水面までの落差を有効に利用する
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正解 ④放水面までの落差を有効に利用する
解説
詳細解説
吸出し管は、反動水車の出口から放水面までをつなぐ末広がりの管です。水車の出口を放水面より高い位置に置いても、管内が水で満たされることで出口から放水面までの落差を有効に使えます。あわせて出口の流速を落として運動エネルギーの損失を減らす働きもあります。
水圧管路の圧力上昇を吸収するのはサージタンクの役割です。
取水口から水車まで水を導くのは導水路や水圧管路です。
回転速度を一定に保つのは調速機(ガバナ)の役割です。
ペルトン水車は大気中で噴流を受けるため吸出し管をもちません。反動水車特有の設備である点も押さえておきます。

他の選択肢が不適切な理由
水圧管路の圧力変動を吸収するのは、導水路との接続部に設ける立て坑状の水槽の役目です。取水口から水車まで水を導くのは導水路や水圧管路そのものであり、水車の出口に付ける管とは置かれる位置が反対になります。回転速度を一定に保って周波数を安定させるのは調速機の働きで、水の流れを扱う設備ではありません。水車の出口から放水面までという位置が判断の手がかりです。
問98-1

揚水発電所の運用に関する記述として、正しいものは。

  • ①夜間の余剰電力で水をくみ上げる
  • ②河川の流量をそのまま利用する
  • ③潮の満ち引きを利用して発電する
  • ④地下の蒸気を利用して発電する
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正解 ①夜間の余剰電力で水をくみ上げる
解説
詳細解説
揚水発電所は、上部と下部に調整池をもち、電力需要の少ない夜間や太陽光発電の出力が多い時間帯の余剰電力でポンプ水車を運転して下池から上池へ水をくみ上げ、需要の多い時間帯にその水を落として発電します。電気そのものを位置エネルギーの形でためる、大規模な蓄電設備といえます。
河川の流量をそのまま使うのは流込み式(自流式)の水力発電で、貯留を行いません。
潮の満ち引きを利用するのは潮汐発電、地下の蒸気を利用するのは地熱発電で、いずれも別の方式です。
揚水には発電で得られる以上の電力が必要なので総合効率は7割程度ですが、需給の調整力として重要な役割を担います。

他の選択肢が不適切な理由
河川の流量をそのまま利用する方式は水をためないため、需要に合わせて発電する量を調整することができません。潮の満ち引きを利用する方式や、地下の蒸気を利用する方式は、そもそも水をくみ上げて位置エネルギーとしてためるという考え方に基づいておらず、別の種類の発電です。電気をためる手段として運用できるかどうかが、この方式を他と分ける最大の特徴になります。
問108-1

水圧管路において、負荷の急変にともなう水撃作用による圧力変動を緩和するために設ける設備は。

  • ①除じん機
  • ②吸出し管
  • ③サージタンク
  • ④調速機
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正解 ③サージタンク
解説
詳細解説
発電機の負荷が急に変わると水車の入口弁が急激に動き、水圧管路の中の水の流れが急変します。このとき生じる大きな圧力変動が水撃作用(ウォータハンマ)で、管を損傷させるおそれがあります。
サージタンクは導水路と水圧管路の接続部に設ける立て坑状の水槽で、水位が上下することで圧力変動を吸収し、管路を保護します。
除じん機は取水口で流木やごみを取り除く設備です。
吸出し管は反動水車の出口から放水面までをつなぎ、落差を有効に使うための管です。
調速機は回転速度を一定に保って周波数を安定させる装置で、水撃作用そのものを緩和する設備ではありません。

他の選択肢が不適切な理由
取水口で流木やごみを取り除く設備は、水路を詰まらせないためのもので、圧力の変動とは関係がありません。水車の出口から放水面までをつなぐ管は落差を有効に使うための設備で、置かれる位置が水車より下流であり、上流側の管路を守る働きは持ちません。回転速度を一定に保つ装置は周波数を安定させるためのもので、水の流れが急変したときの圧力そのものを和らげる設備ではありません。

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